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浅井信之さん(イタリア料理 LA FOGLIA)

  • 2013.09.05

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●芦屋にまたひとつ新芽が。繊細なセンスを持つシェフとは?●

 

今や予約も難しいレストランとなった『ラ・フォーリア』がオープンしたのは、2003年7月のこと。苦楽園でひと足先にお店をオープンしていた双子の弟、浅井卓司シェフに遅れる事約1年。鳴り物入りでオープンしたこのイタリアンの新店には、同業者からの注目も集まっている。そんな中、マイペースに自身の味をどんどん開拓している浅井信之シェフにお話を伺った。

その前にまず『LA FOGLIA』をチェック→

 

 

--初めて取材でゆっくりお料理の話を伺ったとき、シェフは自らの料理のテーマを「野菜」と断言した。確かに珍しい野菜が出てくることは多いし、食べてもそれが何なのかさえわからないなんてことも少なくない。「美味しい」だけじゃなく「びっくり」も体験できる料理だが、なぜ、いま野菜に注目するのか?!

 

最近になって、随分野菜、野菜と言われるようになりましたよね。でも、これまで野菜って、あまり食べられてなかったんじゃないかと思うんですよ。お肉も野菜もバランスよく食べなくちゃとは思っていても、なかなか…なんてね。でも、野菜をたくさん食べたら、「いい食事をしたー!」っていう気持ちになりません?

 

野菜って、食べ過ぎってことはないと思うんですよ。たくさん食べたからといって、次の日にしんどくなることもないし。それに、僕のところには仕事柄、美味しい野菜の情報がたくさん入ってくる。だからみんなに「食べさせたい!」という思いもあるんですよ。あ! でも今の野菜って、決して安くはないんです。お肉より高いものもあるぐらいで。だから、安くあげようって思ってるわけではないんですよ(笑)。

 

 

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●「四六時中料理のことを考えている」。

 

珍しい野菜は、知り合いの農家の方や、同業者から情報を得て仕入れることが多いですね。

 

こんなの見たことないぞ!っていう野菜に出会った時は、まず、生で食べてみるんです。それから塩茹でしてみる、焼いてみる、蒸してみる。それでも食べられなかったら、ピューレにしてみる--と実験するんです。

 

例えば、最近入ってきている“四角豆”という沖縄原産の豆があります。見た目は「何コレ?!」っていうものなんだけど、ちゃんと処理したらすごく美味しいんですよ!! この豆もそうやって実験してみて、これまで使ったもののどれに似ているだろうか、と考えてみるわけです。四角豆なら、豆の青っぽさ、甘さ、それからガクの苦味。味の要素としては3つです。これをどうやって生かしていくか、アイディアをひねるんです。

 

いつ考えるかって? 四六時中、考えていますね(笑)。そりゃあもう、寝ても覚めても、お風呂の中でも、仕入れに行く車の中でもずっと。もちろん、煮詰まる時もありますよ。そんな時は、いったん考えるのを止めるんです。気心の知れたスタッフたちと、ほんっとにしょうもない無駄話をしたりして、頭をクールダウンさせるんですよ。そうするとまた、「俺って天才か?」と思うほどアイディアが出てくるんですよ!(笑)。

 

 

--常に料理のことを考えている、いや考えてしまうのだろう。料理人という仕事は、浅井氏にとって天職のように思えるが…

 

シェフになった理由はね、すごく不純なんです。あんまり言いたくないけど(笑)、一応言っときますか。

 

高校時代、僕は洋服がすごく好きで、服屋でアルバイトしてたんですよね。でも、ある都合でそこのバイトを辞めることになり、つなぎのつもりで働き始めたのが、今はなき岡本のとある飲食店。料理なんて、やったこともなかったんだけど、これが結構楽しくてね。で、1ヶ月過ぎた頃、ふと周りを見ると、食べるものいっぱいあるでしょ? これは食いっぱぐれがないな、と。しかもお給料までもらえてしまう(笑)。で、料理学校に進んだんですよ。

 

動機は不純だったけど、やっていくうちに、どんどん欲が出てきたんです。この業界でトップになりたい、と。でもそんなに学校は行ってなかったですね。バイトしてたしね。夜遅くまでバイトして、朝は起きられないし(笑)。だけど、卒業前になって、「就職してしまったら時間もなくなる、今しかない!」と、フランスへの留学を決めました。その頃から、イタリア料理をやることは決めていたんですよ。だけど、色々なことを知っておこうと思って、あえてフランスへ。

 

 

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●10代で見たフランス

 

フランスに渡ったのは、まだ10代の頃。そんな時に、単身外国で暮らしたことで、とにかく精神面でものすごく鍛えられたと思います。言葉が話せないと相手にもされず、東洋人に対する差別的な目もある。この国で俺はどうやって生きていったらいいんだ?というところから始まりましたからね。とにかく我慢を覚えたという感じです。

 

フランスでは、リヨンの2つ星のレストランにいたんです。それから5つ星のホテルのメインダイニング。でも、いただけですよ(笑)。学んだのはとにかく我慢。料理としては、驚くかもしれないけど、テクニックについては日本のほうがぜんぜん上なんですよ。もちろん、そのときは精一杯だったし、今だから言えることなんですけど。

 

当時は調理経験もまったくない状態で。ただ、行ったのがちょうどジビエの季節でね。ジビエをさばくのが僕の担当だったんです。キジや鳩、山うずらなんかを40羽ずつぐらい、毎日。その作業で、一日が終わってしまう感じでね。おかけで今では、すごくキレイにさばけますよ。内臓にまったく傷をつけずに、お尻から取り除くんですよ。それが当時の賜物かもしれないですね(笑)。

 

大変な毎日でしたけど、僕は結構、“感動しぃ”でね。石ころ一個見ただけでも感動していたんです。あのときの感覚や感動を忘れちゃいけないと思っているんです。

 

料理って、ホントにセンスが大事だと思うんですよ。ある程度までは誰にでもできる。教えられた事をコピーするだけなら、ね。でも、そこに自分の感覚をプラスすれば、それ以上のものになるんです。逆に、センスや感覚がなければ、コピーどまりになってしまうんですよね。

 

 

●センスを磨くために

 

 

センスを磨き、感覚を鈍らせないために、とにかくほかのお店によく食べに行くようにしています。イタリアンだけじゃなくて、いろんなお店にね。それから、美術館などへも行くようにしてます。絵心はないんですよ。でも、いい作品に触れて、「分かろう」とする気持ちを忘れないでおこうと思って。

 

それから、同業者からの情報も大事。今、仲のいい同業者には、東京で勤めていた頃に知り合った、10年越しの友達も多いんです。『アルポルト』(浅井氏が勤めていた西麻布の有名店。シェフはかの片岡氏。)で働き始めた時、僕にはたった一人しか知り合いがいなかったんです。だから友達を作ろうと思って。

 

最初のお給料は8万円だけ。でも自分の店が定休日になると、月に何回かは、ほかの店にランチを食べに行くんです。で、食べ終わった後、「アルポルトで働いている者なんですけど、厨房を見せていただけませんか?」って頼むんですよ。ま、見てもよくわかんないんですけど(笑)、見たいじゃないですか、他の店がどうなっているのか。で、そんなことを続けているうちに、上司だった片岡シェフの耳に入ってね。「お前、なんか変なことやってない?」って。こっちは変と思ってないんでね(笑)。怒られはしなかったですけど。そうやっているうちに、「あいつ、ちょっと変わってる」って噂になって、色々な集まりで出会う他の店の同年代の料理人と話すようになり、仲良くなっていったんですよ。その時にできた友達とは、今でも仲がいい。横のつながりとかブレーンはその時期にできたと思います。

 

 

●LA FOGLIAという空間のなかで。

 

お店をオープンして4ヶ月。まだまだって感じですね(笑)。
ただ最初に比べれば、ほんの少しだけど、店のシステムが出来てきた気がします。最初の頃は、それこそ早朝から夜中の2時、3時までお店につきっきりだったんですが、もう少し早く帰れるようになってきたってことは、オペレーション出来るようになってきたってことですよね。

 

店をオープンするにあたっては、とにかく、「いいロケーション」がほしいと思っていたんです。なかなか物件がみつからなくて困りましたが(笑)、ここを見た瞬間に「ここだ!」と思ったんです。

 

実は、店をオープンしたら絶対につけようと、ずっと温めていた名前があったんですよ。でもこの店内を見て、負けましたね。このロケーションに。だから葉っぱを意味する「ラ・フォーリア」という名前に決めたんですよ。

 

店内はかなりゆったりと作りました。最初はカウンターも作ろうかと考えたんですが、せっかくまら目の前の大木が生きる、大きなテーブルを置こうと。このテーブルがあることで、ダイニングのイメージが出るでしょう? 敷居が高い店ではないから、色々な表情があったほうがいいと思ったんです。

 

 

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●これからのこと。

 

“芦屋イタリアン”というようなものを創っていければ、と思っています。ただ、それが「どんなものなのか」というと、まだ自分のなかで徐々に出来上がってきている段階です。料理というものは、昨日と今日、今日と明日でも刻々と変わっていくものなので、やがて形になっていくと思います。ぜひ楽しみにしていてくださいね!そして、店全体としては、この空間を精神的に楽しんでもらえる場所にしていければいいな、と思っています。

 

よくも悪くも、結構お叱りも受けているんです。でも、そういうことを言ってくださるお客さんがいるのはありがたい事なんですよ。もちろん、カチン!と来ることもありますよ(笑)。全てを受け入れられる訳ではないんですし。でも、ちゃんと耳に入っています。謙虚に、真摯に受け止めていきたいと思っています。誠心誠意でやって、お客さんに楽しんでいただきたいですね。

 

 

--浅井シェフの表情は、とても穏やかだ。若い頃には、かなりのやんちゃだった、なんて噂も耳にするが、渡仏時代の鍛錬からか(?)、優しげで、決して奢らない物腰には、スタッフの信頼も篤いよう。料理にも、店にもそんな人柄が現れている。イタリアン界でも話題のシェフは、時代に流される事なく、おっとりと着実に歩んでいくのかもしれない。今後の変化に、乞う、ご期待!

 

 


 

 

LA FOGLIA (ラ・フォーリア)

芦屋市公光町9-3 izaビル3F
0797-23-8887
阪神芦屋駅 徒歩5分

 

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